スウィートテラス
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 エロエロパラダイス 【1話】
   彩香りさ 著/2007年12月

 

 ベッドの前で躊躇すると、伸びてくる大きな手。
 それだけで、ぼくは身体を竦ませる。
 けれど、手はバスローブの袖を掴んで強引に引き寄せるのだ。

「早く来い」
 
 と、手の持ち主が言った。
 ぼくは一瞬だけ彼を見ると、視線を下に落としてのろのろと膝でシーツの上に這い上がる。
 じんわりと、皮膚が熱を持っていた。
 シャワーのせいだけでない火照りが身体を淫らに燻らせる。
 どうしようどうしよう……。
 この先に何が待ち受けているのか、ぼくの身体はすでに分かっている。
 そうされるとどうなるのかも、全部理解している。
 こんなこと、間違っていると思うのに。

「ぐずぐずしないでさっさと脱げよ」
 
 手が皮膚を撫でた。
 触れられた場所がぴりっと痺れ、ぼくはイケナイ予感にまみれながら、バスローブの紐に手をかけた。
    
  ◇◆◇
  
 ぼくの名前は春名拓海。二〇歳。
 南青山の宝仙大学に通う二年生。
 
 宝仙は幼稚舎から大学まである総合学園で、ぼくは中学の時からそこに通っている。
 成績はつねに学年トップで、それは今も継続中。
 でも、高校三年の時、果物店を経営する父が病気で倒れ、正直、進学は諦めていたのだけど。
 
 そんなぼくに進学費用の肩代わりを持ちかけてくれたのが同級生の斬間泰征くん。
 彼は学園経営者の親戚で、それくらいのお金は都合つくのだという。
 性格はまるで違うし、つるむ友人のタイプも違うのだけど、ぼくの窮状に口を挟みたかったみたい。
 とはいえ、年間学費だけでも軽く百数十万。借りることさえ、ぼくにはムリ。
 即座に断ったのだけど、泰征くんはそんなぼくにある条件を突きつけた。

 大学在学中は彼のおもちゃになれ――……と。
 
  ◇◆◇     
 
 ルームライトが眩しかった。
 ここは広尾にある宝仙学園教職員用官舎。その一階角部屋がぼくの住むところ。
 三〇平米ほどの部屋にはキッチンとダイニング、それにダブルベッドの置かれた寝室があり、どの部屋からもテラス越しの中庭を眺められる。
 泰征くんに半ば強引に押し切られたぼくは、彼の申し出と引き換えに大学生活と不足ない住環境を約束されたわけなのだけど。

「あの、明かり、消して……」
 
 バスローブの前を開きながら、ぼくは精一杯の抵抗を試みる。
 ベッドの真ん中にはトレーナーにスウェットの泰征くんが胡坐で座り、ぼくはその前に膝立ちになりながら、素肌を晒しているのだ。
 はじめてのことじゃない。彼に裸を見せるのはほぼ毎日で、ただ見せる時もあれば、色々悪戯されたり、時にはアナルセックスをさせられたり。

 初めて彼にすべてを奪われたのは、彼の申し出を拒否した時。
 学校の床の上で無理やり犯され、「一度やったらあとは何回でも同じだろう」と、強制的に彼の申し出を飲まされ……それ以来、ぼくは彼のおもちゃ。
 
 ぼくは大人しい性格をしている。
 身体は細いし、顔も女の子みたいな優しげな造りをしている(らしい)ので、暇つぶしにはちょうどいいらしい。
 だから、ぼくの情けない身体は彼との行為に馴染んでいる。
 彼を見るだけでいやらしい気分になってしまうくらい。
 けれど、それを歓迎しているわけではなく、 友人なのに、男同士なのに、こんなのおかしいよ……と思うのだけど。
  
「消したら見えないだろうが」

 見られたくないから言っているのに、泰征くんは意地が悪い。
 というより、ぼくのいやがることを喜んでするところがあり、もしかするとSなのだろうか。
 泰征くんはぼくと同じ宝仙大学の二年生。お金持ちの俺サマで、ワイルド系のイケメン。
 女の子からの評判は良く、男相手にこんなことしなくてもいいのに……。

「ほら、ボサッとしてないで、さっさとしろよ」

 凄みのある声で命令され、ぼくは逆らえなくなってしまう。
 ぼくは彼に背中を向けると、いつも通り――シーツの上に四つん這いになる。
 そうしてから、肩を下げて膝を広げ、みっともなく彼にお尻を突き出すのだ。

「こ、これで……」

 肩越しに振り返りながら、ぼくは彼を見上げる。すごく恥ずかしい格好。
 だけど、しなければならないのだ。
 彼に身体検査をされることは、ぼくの日課なのだから。



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